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この世界――アルスヴェリアには、とある勇者の
辺境のリオネルディアの村に住む青年のセリュオスは、その御伽話が子どもの頃から大好きだった。
勇者になった者が共に戦う仲間を集めて、人間たちを苦しめる魔王を倒すどこにでもあるような伝承。でも、その勇者には普通と違う点が一つだけあった。
それは時を越えて魔王と戦い続ける勇者だったのだ。いつか自分も勇者になって魔王を倒すことができたら――。
だが、そんなことは決してあり得ない。自分はただのしがない鍛冶師の息子なのだから。
将来、自分も同じようにその日の夜は、不思議な静けさに包まれていた。
昼間まで子供たちの笑い声が響いていた小道も、家畜の鳴き声で賑やかだった「どうも胸騒ぎがする……」
村長が広場に立ち、そう 闇の中から、かすかな
やがて木々を押しのけるように現れたのは、黒き巨狼――ルゥン・ヴォルフ。
月明かりに照らされたその毛並みは墨のように黒く、身体を走る赤い紋様が脈打つたびに「……で、出た…! 魔王軍の
ルゥン・ヴォルフ――かつて戦乱の時代に幾つもの村々を滅ぼした災厄の獣。
その背に刻まれた黒い印は、まさに魔王軍の使いである証だと言われている。すると、セリュオスの義父であるオルフェンが果敢に前へ進み出た。
「義父さん……?」 オルフェンは大きな鉄槌を肩に担ぎ、息子のように育ててきたセリュオスを守ろうとしたのだ。「戦えない者は下がってろ! 村のみんなで逃げるための準備をしてくれ! オレが時間を稼ぐ!」
しかし、村人たちは「なんで、みんな逃げないんだよッ! 義父さんが戦っている間に早く逃げろ!」
セリュオスが村人たちを避難させようと大声を出すが、彼らはまるで山のように動かなかった。「はぁ……!」
そんな中、オルフェンは恐れを飲み込み、家族と村を守るために足を止めなかった。 ルゥン・ヴォルフの低いその時、セリュオスは嫌な予感がした。
このまま見ていたら、父親が無惨に殺されてしまいそうな胸騒ぎだった。根拠なんて一つもない。
だが、絶対に後悔することになると思ったのだ。次の瞬間、巨狼はオルフェンに向かって稲妻のように飛びかかった。
その爪はオルフェンの首を狙い「やぁああああめろぉぉぉッ!」
セリュオスは考えるよりも先に、自身の身体を投げ出していた。 その勢いのままにオルフェンを突き飛ばし、自らがその爪を受け止める。「セリュオスッ!?」
その凶悪な力は、今にもセリュオスを押し潰しそうだった。 武器も何も持たず、自身を支えているのはほんの僅かな魔力だった。自分が先だってしまったら、オルフェンは悲しんでしまうかもしれない。
義母のセリナは三日三晩寝込んでしまうかもしれない。 それでも、セリュオスの力でこの村を守ることができれば……。「俺は……俺はぁぁぁぁああ!!! この村を――!!」
巨狼の力は魔力すらも貫通し、セリュオスの骨を突然、光が走った。
セリュオスの左手の甲にそこには、見たこともない文字が連なっており、太陽を模したような紋章が浮かび上がっていた。
光は巨狼の爪を弾き返し、まるで瘴気を浄化するように燃え広がっていく。「な……紋章……!? あれは、勇者の……!」
「あの伝承は、本当だったのか……」 村人たちが
「痛く、ない……」
セリュオスは息を荒げながら、自分の左手を見つめる。 確かに刻まれた紋章は熱を放ち、心臓の鼓動と同調するように輝いていた。それはまるで御伽話で聞いて憧れていた存在にそっくりだった。
光輝く紋章が意味することを、セリュオスはすぐに理解した。――自分が、勇者に選ばれたのだと。
しかし、巨狼は
「俺なら、勇者なら、やれるのか……!?」
だが、セリュオスは義父の落とした恐怖でその膝は震えていた。
それでも、背後には家族と村人たちがいる以上、セリュオスが退くことは許されなかった。 巨狼の爪と鉄槌が激突し、
「うぉぉおおおッ!」
セリュオスが叫びと共に振り下ろした鉄槌は巨狼の顎を砕き、火花を散らして大地さえも揺るがした。 ルゥン・ヴォルフはそして、セリュオスに向かって一歩踏み出したと思いきや、その場に倒れ伏したのだった。
その場に残されたのは、焦げた土の匂いと震える村人たちの吐息だけだった。「……勝った……のか?」
「弱虫セリュオスが……?」誰もが目の前で起こった光景を信じられずにいた。
今まではただの村人でしかなかった青年が魔王軍の尖兵を倒してしまったのだ。「あなたは、何てことを……」
駆けつけて来たセリナは涙をこぼし、セリュオスの背に「間違いない……。その紋章は伝承にて語られし勇者の証。セリュオス……お
すると、村人たちの目が恐怖から希望へと変わっていく。
とはいえ、彼らの胸には言い知れぬ不安も残っていた。魔王軍の尖兵が現れ、勇者が誕生したということは、魔王軍の侵攻が本格化するということに他ならないからだ。
それと同時に、勇者の存在は絶望の「俺……本当に、勇者になったんだ……」
セリュオスは唇をそれは――守ること。
義母であるセリナを、義父であるオルフェンを、このリオネルディアの村を、そしてこのアルスヴェリアの世界を。「……俺、行きます。みんなが平和に暮らせる世界になるように、魔王軍と戦います……!」
それは 彼らはただ沈黙し、そして静かに
「セリュオス……お前が、勇者になっちまうなんてな……」
オルフェンが言葉を詰まらせる。 その表情は喜ばしい感情と同時に哀愁を帯びていた。「どうして、あなたなの……」
セリナは震える手で息子の頬をそっと優しくその夜、リオネルディアの村に勇者セリュオスが誕生した。
この時から、セリュオスの長き戦いの日々が始まったのだった――。◆現代世界(アルスヴェリア)●セリュオス 辺境リオネルディアの村出身の人間。 義父はオルフェン、義母はセリナ。 勇者として覚醒してから魔王討伐の旅に出た。●フィオラ エルフの女性で、弓と魔法のどちらも扱うサポーターである。 竪琴を弾いている時間が彼女にとっての安らぎ。 イヴェリナとクイラという妹分とエルフの仲間たちを救い出すため、セリュオスに同行した。●ダルク ドワーフのおっさんで、怪力で巨大な斧を振るう戦士である。 酒と旨い飯には目がない。 実はフィオラも認めるほどに歌が上手い。 ドワーフの誇りである鉱山を取り返すため、セリュオスに同行を願い出た。●ミュリナ 猫人族の少女で、その俊敏な動きで二つの短剣を扱う盗賊である。 特に魚が大好物で、意外に義理堅いやつである。 魔王との因縁というよりも、居心地の良さが決めてとなってセリュオスに同行することを決めた。●アベリオン 最後に勇者パーティーに加わった槍使い。 元は神官職だったらしいが、魔王軍に入ってから闇に染まってしまった。 王国に故郷を焼かれたことで人間を信じ切れなくなっていたが、セリュオスたちの光に心を打たれて同行することを決めた。●エレージア 七つの心臓を過去の文明に置いて来たため、現代では不滅の存在となった最強の魔王。 勇者パーティーを試すような奇々怪々な言動を取り、混乱させる。 その見た目は女性ではあるが、圧倒的な実力の持ち主である。
「……女だからって、容赦はしないっ!」 果敢に先陣を切ったセリュオスがその剣を全力で振り被る。 だが、魔王はセリュオスの剣を闇の力を纏ったその手で軽々と受け止めていた。「っ……!」 セリュオスは剣を握り締めて全力で押し込もうとするが、魔王はびくともしない。「ほら、遠慮してないで全員でかかって来なさい」「くっ……ここで諦めるわけにはいかないわ! 《スピラ・ヴェンティ》ッ!」 フィオラは最初から油断することなく、風を纏う矢を解き放った。 しかし、魔王の黒い魔力の渦が矢の軌道を歪めてしまう。 弓から放たれた螺旋の矢は直前で勢いを失い、あっけなく床に叩きつけられた。「断轟破ぁぁああ‼」 ダルクは怒りを滲ませて、ありったけの力で斧を振るった。 断轟破の衝撃で辺りの石柱は砕かれ、そのまま魔王にも勢いよく迫っていくが、玉座の周囲に張られた魔力の結界が衝撃波を打ち消していた。「な……なんだよ、この力は……!」 ダルクが叫びが虚しく響く。「力だけは立派だと思うわ」「次はボクがっ! 影猫乱爪にゃっ!!」 ミュリナは俊敏な身のこなしで魔王に接近し、両手の短剣で斬りかかる。 だが、魔王の魔力の波に弾かれ、攻撃は空を切った。 彼女は素早く後退し、次の機会を狙っている。「あなたはずいぶん俊敏な動きをするのね……」「黒槍・奈落穿葬ぉぉ‼」 そして、ついにアベリオンも攻撃に加わった。 黒く燃えるような闇の槍撃が魔王に迫る。 しかし、魔王は目の前に魔力の盾を作り上げ、アベリオンの奥義すらも難なく受け止めてしまった。「四天将の力程度、私に効くと思っているの?」 セリュオスたちの攻撃は魔王の余裕の笑みを崩すことができない。「私が待ち侘びていた勇者パーティーの力がこの程度だったなんて……」 次の瞬間、魔王の指先から黒い光線が放たれる。 それは最も魔王の近くにいたセリュオスの肩を掠めた。「ぐっ……!」 後方ではアベリオンが盾を構え、何とか魔力の光線から仲間たちを守ることができたが、セリュオスだけは庇うことができなかった。「セリュオスッ!?」 セリュオスが膝をつくと、フィオラが駆け出して治癒の魔
灰色の雲が垂れ込める空の下、五人は荒涼とした大地を進み、魔王城の影が徐々にその姿を現し始めた。 その城壁は高く、巨大な門は閉ざされているものの、その威圧感は圧倒的だった。「……魔王城だな」 セリュオスがこれまでの旅路を思い出しながら呟いた。 短いようで長い旅だった。 村を出てから広大な森を抜け、高い山を越え、街道をひたすら歩き、荒野を抜けて、深い谷を越えて、ここまで来た。 この仲間たちと出会わなければ、ここまで辿り着けなかったかもしれない。 ダルクは斧を肩にかけ、城壁を睨んでいる。「まあ何つーか、思ったより静かだな。明らかに見張りも少ないし……いや、これってまさか何か意図があるんじゃねえか?」 フィオラは一切警戒を解かず、矢筒に手をかけている。「魔王は何を考えているの? 見張りを減らしていいことなんて何もないのに……」「おみゃあらはちゃんと下がってろにゃ」 いつの間にか罠を探知する逞しくなっていたミュリナは、しなやかに身を屈めながら先頭を歩き、通路に罠がないか確認しながら言った。 アベリオンは少し後ろに下がり、肩に力を入れる。「私は……万が一の盾役だ。何かあった時は頼ってくれて構わない。魔王さまはそれだけ強大なお方である」「本当に盾みたいに堅いヤツだな」「違えねえや」 ダルクはそう言って笑いつつも警戒は怠らない。「これで開くんじゃないか?」「セリュオス! また勝手なことを……!」 フィオラの制止を聞かずにセリュオスはレバーを手前に引いてしまった。 すると、巨大な門が地響きを上げながら開いていく。「別に開いたんだから、いいだろう?」 セリュオスの無神経な言動に呆れながら五人が城内に踏み入ると、外と同様に見張りの数は少なく、通常なら四方を固めているはずの兵士が、あえて絞られていることが明らかだった。「まさか……、オレたちを誘き寄せるためにわざと減らしているとでも言うのか?」 ダルクが低く呟く。 セリュオスは皆の背中を見渡し、短く頷いた。「いや、気を抜くな……。どこから襲撃があるかわかったもんじゃない」「誰もいないのにゃ……」 俺が言った直後にそれを言うなと思うセリュオスだったが、そのツッコミは飲み込むことにした。「だが、魔王のような強大な気配
そこは黒い雲が空を覆い、月の光も僅かにしか届かないような場所だった。 不気味に聳え立つ魔王城の尖塔が遠くに見えている。 冷たい風が吹き抜け、乾いた砂がセリュオスの顔に当たった。 そんな不穏な空気の中、五人は小さな野営地を築いて焚き火を囲んでいた。 ついに、明日に魔王城突入の日を控えていたのだ。 セリュオスたちにとっては火の暖かさだけが唯一の慰めであり、今夜が静かな夜になることを祈ることしかできなかった。 揺れる火を見つめながら、セリュオスがそっと口を開く。「やっとここまで来たな……。みんな、無事にここまで来れて良かった」 フィオラは焚き火に背を預け、静かに夜空を見上げている。「私たちが魔王に負けそうな雰囲気を出すのはやめてほしいけど、もう後戻りはできないわよ……。あとは前に進むだけ」「すまん、そういうつもりではなかったんだがな……」 セリュオスは頬を掻いた。 その横でダルクは大きく溜息をつき、腕を組んで笑っていた。「まさか、オレたち五人だけで来ちまうとは思ってなかったなァ。少人数ってのも悪くはねえけどよ、こうして同じ火を囲めるわけだし。……明日はオレたち、どうなっちまうんだろうな……」 いつも陽気なダルクでさえ、今だけは弱気になっているように見えた。 ミュリナは猫のような目を細めて、ぼんやりと焚き火を見つめながら口を開いた。「にゃあ、セリュオス。次の魚は、いつ食べれるのにゃ……?」 それを聞いたダルクが大きな声で笑い飛ばす。「最後の晩餐かもしれないってのに、お前さんは次の飯の心配かよ! どこまで気楽なんだァ!」「それだけ不安なのかもしれないな……」「不安、かにゃ……?」 アベリオンがミュリナに同情を示したが、ミュリナはその首を傾げていた。 セリュオスは苦笑しながら、火の傍で静かに座ったままのフィオラの方を見た。「フィオラ……。俺がどうなっても、お前は必ず仲間たちと城を出るんだ。俺は……たとえ命を犠牲にしてでも魔王を討つ。これは俺の願いなんだ。お前たちには生き延びて、必ず幸せになってほしい」 フィオラは一瞬息を呑み、目を伏せたまま答える。「……わ、わかってる……。でも、そんな……」「セリュオスとフィオラがなんだかラブラブに見えるにゃ……」
荒野に剣戟の甲高い音が響き続けている。 その音の発生源となった衝撃のもとで、どれだけの土砂が飛び散っただろうか。 セリュオスの剣とアベリオンの槍が幾度となく火花を散らし、地面には数々の抉られた跡が刻まれていた。 セリュオスがアベリオンに苦戦しているのは、誰が見ても明らかだった。「……でも、どうしたら、セリュオスが迷わずに戦うことができると言うの……」 フィオラは胸元で弓を握り締め、声を震わせた。 彼女の瞳には、攻め切ることができずに膠着しているセリュオスとアベリオンの姿が映っている。「おい、フィオラ」 隣で立ち上がったダルクがぼそりと声を掛ける。「お前さんが後ろで震えてたら、あいつはもっと迷っちまうんじゃねえか? そんなんじゃ、坊主だって負けちまうかもしれないぞ?」「ダルク……」「ダルクの言うとおりだにゃ」 ミュリナも腕を組み、フィオラに顔を向けている。「セリュオスが本気を出せないのは、おみゃあが傍にいないからにゃ。……本当に信じられる仲間が傍にいれば、アイツはきっと誰よりも強くなるヤツだと思うのにゃ」「ミュリナ……」 フィオラは大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き出した。 すると、手の震えが収まり、その目には決意が宿ったように見える。「そう、だよ……! 私がセリュオスを信じてあげなくて、どうすんだって話だよね!」 ようやく覚悟を決めたフィオラは弓を背中に戻し、セリュオスのもとに向かって駆け出した。「やれやれ、やっと嬢ちゃんもやる気になったか……」「まったく手のかかるヤツらだにゃ」「お前さん、まだ若い割に古株みてえなこと言うんだな……」 ダルクはミュリナを見て瞠目していた。「ほら、ぼさっとしてにゃいで、残りを片付けるにゃ!」「お、おう……」 二人は温かくフィオラを見送ってから、魔王軍残党との戦いに戻るのだった。「セリュオス! 私があなたを支えるから! 一緒に、アベリオンを倒そう!」 聞き馴染みのある声が響いた瞬間、セリュオスの瞳が揺れた。「……フィオラ……。……ああ! 俺たちでアベリオンと戦おう」 そうだ、自分は一人じゃない。 守るためなら、アベリオンが人間であろうと戦わらなければならない。 そうセリュオスが決意した瞬間、フィオラから光の魔力が
乾き切った大地の上を、風が唸りを上げながら駆け抜けていく。 砂粒が無数の刃のように空へと跳ね上がり、茶色の世界を覆い隠す。 視界の外は薄黄色の靄に包まれ、遠くの岩影すら捉えることはできない。 魔王軍の四天将アベリオンと対峙したセリュオスの間には緊張が走っていた。「お前たちは離れてくれ」 セリュオスの指示でフィオラ、ダルク、ミュリナの三人は少し離れた場所でアベリオンが引き連れていた魔王軍の一団と刃を交えることになった。 鉄と鉄がぶつかり合う音がこだまして、無数の魔法が荒野に光を齎す。「断轟破ッ!」 すると、先陣を切ったダルクの斧から迸る衝撃波が敵兵を薙ぎ倒していき、砂煙を巻き上げた。 「ふふんっ♪ 次はボクの番だにゃ!」 鼻歌混じりで縦横無尽に戦場を駆けるのはミュリナだ。「影猫乱爪にゃッ!」 ミュリナの俊敏な影が地を走り、両手に持つ短剣が複数の敵の鎧の隙間に狙いを定めて切り裂いていく。 あっという間に攻撃を終えたミュリナは鮮やかに後方へと飛び退いた。「これくらいなら余裕だにゃ!」「早くセリュオスと合流しないと!」「嬢ちゃん、わかってるぜェ!」 フィオラの声に合わせ、ダルクの斧が振るわれ、迫る魔王軍の兵士たちを次々に薙ぎ払っていく。 ミュリナが駆け回り、フィオラが魔法を放ち、戦場は混沌と化していた。 そんな激闘がおこなわれている最中──。 セリュオスと対峙していたアベリオンがようやく口を開いた。「貴様が、勇者セリュオスだな」「……ああ、そうだ」「勇者と戦えることができるなんて、私は幸運だ……」 剣を構えながら、セリュオスは目の前の男の姿に眉を寄せた。 魔王軍の鎧をその身に纏ってはいるが、魔族らしい角も牙もない。 それはまるで――。「アベリオン。お前はまさか、人間なのか……?」「……貴様らに語ることはない。ただ、ここで果てよ」 アベリオンは静かに言い放った。 その声はひどく冷たく、切なさを感じさせるようなものだった。 そして、アベリオンは槍をゆっくりと構え直す。「……!」 その瞬間、二人の衝突が始まった。 セリュオスは剣を振るい、アベリオンの槍を迎え撃った